アスペルガー症候群について



アスペルガー症候群は、自閉症を中心とした自閉症スペクトラム(自閉性障害の連続体)に含まれます。
自閉症と似ていますが、ことばの発達の遅れや、知的な遅れが見られないのが特徴です。
アスペルガー症候群のある子は、ことばが達者で、妙に話し好きだったりするため、周囲に障害が認知されないことが多々あります。
しかし実際には社会性の困難を伴います。

話しはするけれど、場面や相手の気持ちを考慮することなく、自分の関心のみを一方的に話したり、相手が不快になることばを、口にしてしまったりするのです。
それゆえに、わがままや自己中心的と誤解を受けることもあります。

アスペルガー症候群は、人との会話・対話が成り立たず、ことばをコミュニケーションの手段としてうまく使うことができない障害ともいえるのです。
そのため他人との意思疎通や人間関係を築くという点においては、困難が多いといえるでしょう。

また、自閉症と同じく、関心の対象が狭く、強いこだわりも見られます。

アスペルガー症候群の原因

アスペルガー症候群には、家族性があることが知られています。
親や親戚にアスペルガー症候群の人がいると、子どももアスペルガー症候群になりやすいことがわかっています。
このことから、自閉症と同じように、複数の遺伝子がかかわっているのだろうと推測することができます。
ただし、「遺伝」といえるほどのの強い関連性はみられません。

原因としては、複数の遺伝子に変異があり、その結果、特定の脳機能が通常とは異なる働きをするため、独特の行動や特異な感覚が生じるのだと考えられています。

アスペルガー症候群は、障害が認知されるようになってからの歴史が浅く、まだまだ研究途上にあるのが実情です。
現在においても不明な点が多く、解明しきれていない障害ともいえます。

アスペルガー症候群の特徴

アスペルガー症候群は自閉症と同じ分類の広汎性発達障害のひとつです。
共通してみられる特徴は、対人関係を築いたり、人と意思疎通をはかったりすることがうまくできない点です。
ただアスペルガー症候群の場合、ことばの遅れがないため、コミュニケーション能力に問題はないと誤解されやすく、人を不快にさせてしまうことがあります。
なぜ相手を怒らせてしまったのか、自分でも理解できず悩むケースが少なくありません。

特徴1 顔の表情が読めない
人と視線を合わせようとしない、と感じられることがしばしばあります。
これは自閉症と同じように、他人に関心を持たないからです。
また、人の顔をみて、誰だか認識しようとしたり、その人がどんな気持ちでいるかを読み取ることも苦手。
顔の表情が読めない原因には、人そのものに関心がないからだ、ということもありますが、相手の表情をとらえ、その人がどんな気持ちでいるかを想像することが困難であることもあげられます。

特徴2 大人びた話し方をする
ことばをよく知っていて、大人が使うような難しい表現を遣ったり、ていねいな口調で話したりする子がいます。
また、抑揚をあまりつけずに平坦な喋り方をすることいます。
つまり、ことばに感情を込めることが苦手なのです。

相手が感情を込めて話しても、それをうまく受け止めることができません。
嬉しいのか、怒っているのが、ことばの裏側を想像するということができないからです。
つまり、ことばで感情を伝え合うことが困難なため、コミュニケーションに支障が生じてしまうことになります。

特徴3 比喩や皮肉がわからない
ことばを文字通りにしか受け取れないのも大きな特徴です。
先生から「寄り道しないで、まっすぐ家に帰りなさい」と言われたとしても、「学校から家に帰るまでの道はまっすぐではありません。途中で曲がり角を曲がらなければなりません」といった風に、まじめに答えます。
「まっすぐ」ということばを、そのままの意味にしか理解できず、ことばから想像することができないのです。
皮肉やお世辞も同様で、ことば通りに受け取ってしまいます。
そのため、円滑なコミュニケーションをとることが難しいといえます。

特徴4 こだわりが強い
道順や手順、方法論などに強いこだわりをもっていることが多いです。
自分がこだわっている道順ややり方を変更しなければならくなった場合、強い不安に襲われパニックに陥いります。
パニックは、大声で泣く、物を投げる、その場から走っていなくなるといった行動があります。
また、他者に怒りの矛先を向けてしまうこともあります。

特徴5 数や漢字の暗記が得意
文字、数字、記号に強い関心をもち、2・3歳から、漢字が書けたり、大人が読むような本が読めたり、数字の羅列を瞬時に記憶できたりする子どもがいます。
こうした子どもたちは非常に高い知能をもっていることが多いです。

特徴6 運動が苦手
ボール投げや、三輪車こぎ、自転車こぎ、縄跳びなど、手足を一緒に動かす運動(協調運動)が苦手な子どももいます。
視覚、聴覚、触覚によって得られた知覚情報を、脳内でうまく整理することができず、自分がどのような動きをしているのか、わからないのではないか、と考えられています。

特徴7 感覚過敏がある
特有の感覚過敏や感覚鈍麻があるのも、自閉症スペクトラムの特性のひとつです。
大きな音、甲高い音など、特定の音を苦手としています。
このほか触れられたときの過敏な反応もよくみられ、気に入った肌触りの服しか着ない、粘土やのりの感触が気持ち悪くて触れない、といった不都合が生じます。

特徴8 時間の流れが理解できない
時間の感覚に特異性がみられ、過去と現在と未来がつながっていて、時間のながれをうまく理解できないことがあります。
これは記憶にかかわる脳の辺縁系と呼ばれる部位の働きが通常とは異なっているためだと考えられています。
たとえば、廊下ですれ違っただけの子をひどくにらみつけたので「なぜ、そんなことをするのか」と聞くと、「1ヶ月前にその子からにらまれたから」といった答えが返ってくることがあります。
1ヶ月前や1年前、あるいはもっと昔の記憶が鮮明に残っていて、ある瞬間に、いま目の前で怒っているかのような感覚に陥ってしまうのです。
なかには以前に不快に感じた出来事を思い出し、パニックに陥ってしまうこともあります。
こういった現象は、周囲の人には理解しにくい特性といえるでしょう。

アスペルガー症候群の診断

発達障害に詳しい児童精神科医や小児神経科医を受診しましょう。
大人の患者を診る精神科医でも診断は行えますが、多くの症例に接している小児の専門医の方が、的確な診断ができます。

アスペルガー症候群は、自閉症の他にも、いくつかの心の病と似た特性をもっているため、鑑別が難しく、診断に時間がかかったり、誤った病名で診断されてしまうこともあります。
よくあるケースでは、統合失調症や強迫性障害と診断されてきた人が、実はアスペルガー症候群だったというケースです。
発達過程や支援状況なども考慮したうえで、慎重に診断することが求められるといえるでしょう。

アスペルガー症候群の治療

治療の柱は療育と呼ばれるものです。
自閉症同様、根本的に治療する方法は、現時点ではありません。
しかしながら、周囲の人がアスペルガー症候群の特性に合わせた接し方、指示の出し方をしてあげたり、人とうまくコミュニケーションとるためのスキルが身につけられるような支援・指導をしていくことで、困難の度合いは軽減されます。

効果的な療育を行うためには、まず、子どもがどのようなことに困っているのか、何につまづいているのか、できるだけ早く気づいてあげることが大切でしょう。



相談窓口

高知県  地域福祉部  療育福祉センター
   
こどもの成長・発達に関して相談できる窓口

病院一欄のサイト


ページトップへ
inserted by FC2 system